助成者インタビュー

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ゴルフ

仁科 優花(にしな ゆうか)さん

2010年生まれ 千葉県出身

次世代育成

インタビュー:2023/09/19

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インタビュー企画第4弾は、中学生ゴルファーの仁科優花さんです。
「クラブが球にしっかり当たった時の気持ちよさが好きです」と笑顔で語る仁科さんは、現在中学2年生。
中学1年生だった2022年には11~12歳の部女子日本代表としてIMGA世界ジュニアゴルフ選手権に出場し、7位と健闘。その後も、2023年度日本ジュニアゴルフ選手権競技女子12歳~14歳の部で2位になるなど、ジュニア世代のトップ選手として活躍を続けています。
2023年に当財団の助成を受け、「貴重な経験を積む機会が増えた」と語る仁科さんに、ゴルフを始めたきっかけから競技の取り組み方、そして将来の目標についてお話を伺いました。
インタビュー:2023年9月19日
 

タイガー・ウッズに憧れて

ゴルフを始めたのは、小学4年生の時のことです。幼い頃から取り組んで来た器械体操を4年生の夏のはじめにやめたのですが、また何かスポーツをやりたいと両親に言ったところ、父がゴルフをすすめてくれました。父は高校まで本気でサッカーをしていて、私が生まれる頃までゴルフもしていたそうです。

軽い気持ちで父と近所のゴルフ練習場に行き、父のクラブで球を打ってみたのですが、もちろんきちんとは当たりません。でも、父がほめてくれたこともあって、楽しかったのを覚えています。私自身はそれで終わりと思っていたのですが、その日の夕食の席で、父が「優花は運動が得意だから、ゴルフで世界一を目指してみたら」と言ってくれたんです。その時は、シンプルに「世界を目指してみたい!」と思えたので、始めることにしました。

その年10月、日本で初開催されたPGAツアー「ZOZOチャンピオンシップ」を父と観に行き、タイガー・ウッズがパターを沈めて優勝を決めた瞬間、ガッツポーズをしている姿を目の当たりにしました。すごくかっこよかったですし、私もあんなふうになりたいと、世界一への思いを改めて強くしたのを覚えています。

やるなら本気で

ただ、ゴルフはお金がかかるスポーツです。私の家は姉と私、そして弟妹4人の6人兄弟で、8人家族。お金を湯水のように使える環境にはありません。だからこそ、「やるからには遊びではなく、本気で」「1年半から2年で全国レベルの選手になる」と父と約束。その翌日から早速、父との朝練をスタートさせました。
毎朝5時に起きて、ランニングをしたり、近所の公園で素振りをしたりするのですが、夏でも冬でも雨や雪が降っていても休めません。また、朝のタイムスケジュールも、7時半までに帰宅し8時までに登校、とバタバタになりました。最初の頃は父についていくのが大変で、本当につらかったです。でも、だらけていては目標は達成できません。私のために父ががんばってくれているのも感じていたので、なんとか続けたところ、今では朝のルーティーンとして当たり前にできるようになりました。

ゴルフの基礎は、近所のゴルフ場のレッスンに通って身につけたのですが、レッスンを受けるにも球を打つにもお金がかかります。そのため、入会から5ヵ月弱の頃、ある程度できるようになったため退会。それ以降はリーズナブルなゴルフ場に通って、父と二人で練習を重ねました。そこからさらに練習に集中できる環境を求めて、小学校を卒業したタイミングでゴルフ場の近くにある現在の家に引っ越しました。これで、睡眠や勉強の時間も確保できるようになり、ありがたかったです。

世界で感じた課題と強み

努力のかいあって、ゴルフを始めて2年後の6年生の時にJGA日本ゴルフ協会第14回全国小学生ゴルフ大会で2位タイ、中学1年生の時にPGAジュニアリーグチャンピオンシップで優勝できました。とくに大きな経験になったのが、昨夏、日本代表として参戦した、IMGA世界ジュニアゴルフ選手権(アメリカ・フロリダ州サンディエゴ)です。私にとっては初めてのアメリカでの試合だったのですが、驚くことだらけでした。そもそも芝の種類が日本とは異なり、それだけでも「何、これ?」と違和感を抱きましたし、ラフも深くて密度が濃いため、クラブを振り抜くのにも苦労しました。本番前の3日間の練習で少し慣れましたが、やはり日々、その芝で練習している選手たちとは差があったと思います。焦っても仕方がないので、開き直ってプレーしたのですが、いろいろな芝でプレーする経験は必要だと痛感しました。

一方で、通用したこともありました。とくにドライバーの弾道の高さと飛距離は周りの選手を上回れていたと思います。これは大きな自信になりましたし、実際、3日間の日程のうち、初日と二日目はトップと1打差の70打で2位につけることができました。ところが、練習ラウンドを含めて5日間、酷暑の中を手押しカートとともに歩き続けたため、最終日は脚が疲れてショットが乱れてしまいました。結果、2オーバーの74打、7位で終了。あと一歩のところで目標に掲げていた世界一に手が届きそうだったため、本当に悔しかったです。ただ、最終日に世界のトップレベルの選手とラウンドできたことで、コースの攻め方など多くのことを吸収できたこと、そして自分の課題がはっきりと見えたことは、大きな収穫でした。

助成金を受けた2023年の活動に関して

帰国後、世界を目指すためにいろいろなことに取り組んでいます。例えば、最後まで戦い切るために必要な体力をつけるには、ただ身体を鍛えるだけではだめだと痛感。そのため、食事の内容や量を見直すとともに、アスリート専門のパーソナルトレーニングに通って筋肉の使い方やリセットの仕方について学び、日々のコンディショニングにも力を入れています。また、アメリカではジュニア選手も一人一台ずつ弾道測定器を持っていました。フォームやスイングの角度、飛距離、回転数などを科学的に解析しながら練習している姿を目の当たりにして、世界で戦うためには、もはや感覚や精神論だけでは通用しないとわかりました。帰国後、父の友人から弾道測定器をプレゼントしていただいたため、毎日の練習で使わせていただいています。

今回の助成金は、主に練習にかかる費用や遠征費に充てさせていただいています。自分の上達に伴って試合で一緒にラウンドを回る選手のレベルも上がったことで、試合に出場すること自体が成長につながっていることを実感しています。そのため、重要な試合はできるだけ出場したいと思っているのですが、助成金のおかげでその回数を増やせているのが本当にありがたいです。さらにレベルアップするために、今後はもっと海外遠征にも行きたいですし、さらに高性能の弾道測定器も手に入れられたら、と考えています。

メジャー優勝、世界ランク1位を目指して

2023年はすでに主要な試合が終了しているため、今は2024年の春から夏にかけて行われる大きな大会でしっかり結果を残せるように練習しています。小柄ながら世界のトップレベルで戦っている畑岡奈紗選手や、豪快なスイングと英語力が魅力の笹生優花選手に憧れています。お二人を目標に、まずは国内ツアーでの優勝を目指します。そこからステップアップして、ゆくゆくは世界のメジャー大会で優勝したいです。そして、日本人選手として最初に、年間での世界女子ランク1位になりたい、と本気で思っています。
ゴルフは、当たった時の気持ちよさも格別ですが、当たらなかった時にどうすれば当たるか、どうしたらもっときれいなフォームでスイングできるかを考えるのも楽しいです。両親に一回でも多くよい結果を報告して喜んでもらえるよう、そして一日でも早く目標を達成できるよう、これからも圧倒的な努力を重ねていきます。

仁科 優花さん

練習場へは、普段はご両親が車で送迎してくれるそうですが、それが難しい場合は、自転車で片道35~40分かけて通うそうです。また、アメリカでは英語のスピードが速かったそうで、「もっと話せたら海外ツアーでも有利になると実感したので、英語の勉強にも力を入れるようになりました」とのこと。勉強にゴルフの練習に忙しくも充実した毎日を送る仁科さん。世界の舞台でウィナーズジャケットを着て、大きなトロフィーを掲げる日が来ることを楽しみにしています!